マイナンバーカードの顔認証は指紋の1000倍の識別性

スマホとマイナカード 日弁連情報問題対策委副委員長 武藤糾明弁護士に聞く

赤旗 2022年5月5日

マイナンバーは、…政令により、税や社会保障という当初の目的以外の行政事務に利用範囲が拡大しています。しかも、マイナンバーカードで使用される識別符号は、民間にも開放され、明確な利用制限はありません。歯止めのない利活用の推進は、プライバシーへの重大な脅威です。
また、カード取得者の顔認証データは、現在自治体が管理していますが、国が管理する方向に向かっています。
顔認証は、指紋の1000倍の識別性があるので、健康保険証や運転免許証と連動させて国が事実上強制的に全国民の情報を収集管理することは、民主主義国家ではありえない野蛮なプライバシー侵害です。

赤旗2022年5月6日

 ―この先どんな社会が待ち受けていますか。
警察による利用
 …中国国内には顔認証カメラが6億台設置され、通行する市民の行動を常時監視しています。…顔だけで商品が購入できる「便利」な社会です。
 他方、赤信号を無視した歩行者は瞬時に個人が特定され、周辺ビルの大型スクリーンに顔と名前が映し出され、罰金を科されます。政府を批判することは犯罪とされているので、カメラで撮影され逮捕された例もありました。「天網」というこの仕組みは毎秒30億人分を照合可能だといいます。
 日本でも、警察が法律の根拠もなく犯罪捜査に利用しており、JR東日本も公共空間で顔認証カメラを使用しています。法律によるルールのない顔認証データの収集・利用は原則として禁止すべきなので、日弁連はこれらに反対しています。

 イスラエルの治安当局は、コロナの接触確認アプリを利用してデモ隊の参加者を特定し警告を発しています。
…(日本の)警察によるマイナンバー利用に対しては、個人情報保護委員会の監督が及びません。「市民監視」に対するプライバシー保護のルールがないので、問題です。
「悪いことをしていないなら気にする必要がない」というのは、ナチスの言い方です。EUがプライバシー保護に熱心なのは、ナチスに対する深い反省と、それを忘れない不断の努力です。
 ロシアや中国のように、政府批判の抑圧や監視は弾圧や戦争へ向かう道です。先人の苦労や犠牲の上に勝ち取られた権利章典としての憲法の価値を今こそ再確認する必要があります。
 自由で快適な社会を将来に引き継ぐために、主権者としてNOと言い続けましょう。