ウルトラマンと「じゃあくせいめいたい」

昨日、子どもが風邪を引いたので、診療所に連れて行った。その診療所にかかるのは初めてだった。小児科を標榜しているその診療所の待合には子ども向けの読み物はウルトラマンシリーズの写真絵本しかおいてなかった。
子どもは次から次へととっかえひっかえそれを持ってきては広げて眺めていたのだが、見れば「じゃあくせいめいたい」と名づけられた怪獣がいるではないか。
「最近は、邪悪生命体とか言うのか。」
ちなみにそれは、これ(ウイキペディアの文字情報のみ)。


悪とは何か

悪とはなんだろうか。悪性新生物の悪性は人や動物を死に至らしめるから「悪性」なのだろう。
他者としての「悪」はなんだろうか。「悪」の目指すところはなんだろうか。
水戸黄門に出てくる「悪者」はたいてい自分の欲望(出世、地位保全、性欲、金銭欲など)を充足するために、他人や他人の財産を不当に支配したり、真実を隠蔽したりするから「悪」なのだろう。

外来の悪とは何か

しかし、宇宙生物に「悪」というものはあるのだろうか。人を死に至らしめたり、損害を与えたりする動物や微生物だとすると、それは「害獣」「病原性○○」「敵」であって、「邪悪昆虫」だとか「邪悪動物」だとかは言わない。
宇宙からやってきた怪獣にしたって、中には漂流者の「あわれ」を背負っている怪獣だっているだろうし、彼らなりの生命活動の現われとして地球での破壊活動になるはずである。だからウルトラマンウルトラセブンが助けた怪獣たちもいた。

「邪悪」とは何か

邪悪という言葉はあまり使わない。「邪悪な霊」だとかは聞いた事はあるが。よほど、根拠もなくネクロフィリアで嗜虐的な性癖の強烈な何かの破壊・殺戮行為なら「邪悪」呼ばわりされるだろうが。まあ、イラクやアフガンにおける米軍やNATO軍などは「邪悪」呼ばわりされても仕方がないことをやってはいるだろうが。
「邪悪」といったとき、その主体の目的は「邪悪行為」そのものであるのだろうか。


子ども番組と「悪」

勧善懲悪の物語、敵なりの論理に従って「悪役」を演ずるキャラクターというのは、ある。ありうる。それは彼らの「悪」性についての理解は困難ではなく根拠が明らかなものが多い。たいていは冒頭に述べたように自己のみの利益の追求で泰平な日常や正義を蹂躙するから「悪」なのである。
ところが、ウルトラマン(シリーズ)は最近は観ていないのでわからないけど、登場する敵役怪獣のネーミングが「邪悪」というのは、いかがなものか。はじめから「邪悪」であって、探求的な認識は排除され、「やっぱりあいつは邪悪」という嫌悪感を増強させる認識だけが許されているネーミング(エスペラントならnom-adoか)である。
あいつは「悪いやつだ」というレッテルがあらかじめ貼られているようなキャラクターは、たしかにウルトラマンに限らずたくさんあるのだけど、「邪悪生命体」には違和感が強くてここに記録しておくことにする。



記事と直接の関係はないけど、悪名高いゴモラに対するウルトラリンチの動画
http://www.youtube.com/watch?v=BRMa8ozE96k&feature=related
1分過ぎくらいから1分間の怪獣ゴモラをいたぶるウルトラ兄弟たちがこわい。
この作品の解説はこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A96%E5%85%84%E5%BC%9FVS%E6%80%AA%E7%8D%A3%E8%BB%8D%E5%9B%A3