受身文のこと / Pasiva frazo pri tio, kion oni deziras

G. Orwell --- 'Journalism is printing what someone else does not want printed: everything else is public relations.'

Hatena で public relations への自動リンクが生成したので読んでみたら面白かったので、固定しておきます。


「〜されたい」、「〜されたくない」という文は日本語では毎日のように使うし、その主語や行為主は省略されていることが多い。否定形では…
(私が世間に)知られたくない秘密、(彼が誰にも)触れられたくない彼女の過去、言われたくない、見られたくない、教えられたくない、疑われたくない……。


「〜[a]れ・たく・ない」という句は直訳では volas [deziras] ne esti ... ita/ata/ota ということを五(六)音で表現してると思うのだが、日本語は「未〜」という語とともにこの言い回しは大変便利なものだと再認識してしまう。(それは私の「非日本語」力のなさのせいでもあろうが)。


ところが、私が知っているエスペラント−日本語の対訳を探してもなかなか「〜れたい」「〜れたくない」という文は見つからない。見つかっても、受身の文ではなく能動の文だったりする。知られたくないも ne volas sciigi などとなっていることがある。
でも知ってしまう人には同一のことであったとしても、「(自ら)知らせることはしたくない」と「知られてしまいたくない」とは、全く違うことであろう。



他動詞を自動詞化して能動文にしている。

(lernu!の過去の「今日の単語」の INICI より。本日時点では未再掲。文は編集済み)


伝授されたくない
Mi ne volas iniciigxi pri ili.

http://ja.lernu.net/lernado/vortoj/tagovortoj/arkivo.php?ordo=vorto&p=2

(芦屋エスペラント会の「今日の単語」の2009年3月26日の対訳。編集)


疑われたい。
Li dezirus esti suspektata pri io.


であれば、スマートかどうか別にして受身にすると、

知られたくないこと
Tio, pri kio (kion) iu alia deziras ne esti sciita. (deziras resti ne sciita).

となると思う。知られないでいたい、という気持ちだと resti の方がしっくりくる感じがする。



実は冒頭のオーウェルの言はここにエスペラント訳があるのだが

Ĵurnalismo estas presi kion iu alia ne volas presi. Ĉio alia estas publikaj rilatoj.

http://nudaesperantisto.blogspot.jp/2012/07/kio-estas-jurnalismo.html

これは Google 翻訳機で出てくるお告げ文と同一である。これの気に食わないところは、英語で printed なっている単語が presi という原形になっているところ。


日本語に引き寄せて(印刷以外のメディアも含めて)やり直すとすれば、

Jxurnalismo estas raporti tion, pri kio iu alia deziras ne esti raportata. Cxio cetera estas nur publikaj anoncoj.

あるいは publikaj informajxoj かなぁ。Wikipedia によれば、pli klare publika informadoらしい。ここでいう広報は「報道」という営みに対して、広報という営みのようである。



もっと受身文でスマートだったり適切だったりする文があれば、是非教えてください。
それにしてもさ、英語だと100点の正解からほんの少しの別解答があるだけで、他はバツを付けられるけど、エスペラントでは、善意でそうなのだろうけどバツを付けたがる人、というのはほとんどいないから、気持ちが楽なのだ。けっこうダメ出しするひとは居るみたいだけどね。