正直じいさん (Nur en la japana)

日本の昔話には、正直じいさん(または婆さん)と意地悪でうそつきなじいさんとがペアで登場する。そして二人はしばしば隣同士で住んでいる。
意地悪じいさんはたいてい、財宝や金品または健康を手に入れた正直爺さんの猿真似をして、「かわらや瀬戸かけ」「へびや虫」などの産業廃棄物や飼えない生き物、おばけやほっぺたの腫瘍・気まぐれな刑事罰など、ありがたくないものをもらってしまうという、実は気の毒な老人である。

 あるところに正直なおじいさんがおりました。隣には不正直で意地悪なおじいさんが住んでいました。
 正直爺さんは、特段の社会貢献をするというわけでもないのですが、なんとなく良いことが続いてたくさんの財宝や小判を手に入れたりしていました。しかしその財宝はどこにしまうのか、何に使っているのか、相変わらずこぎれいながらも小さい家に住んでいました。
 隣の不正直で意地悪なおじいさんは、何度も痛い目に逢うのですが、相変わらず人をだましたりからかったりしては喜んでいました。また欲深いものの、裕福なはずの隣の家に盗みに入るようなことはせず、正直爺さんのマネをしては失敗ばかりしていました。
 ある時などは、隣の白い犬を借り出して、気に入らないからと打ち殺したり、また借りてきた臼を勝手に燃やしてしまったりと、ずいぶんひどいことをしたこともあります。しかし、隣の正直爺さんは、「隣のよしみだから」と毎度許してくれるし(金持ちけんかせず、でしょうか)、意地悪じいさんがいろんなひどい目に逢っても、正直爺さんは医療費を出してくれたりおすそ分けだと、ご馳走を持って来てくれたりしていました。そのことがまた正直爺さんの評判を高めもしていたのです。



 さて、ある日、正直爺さんはまたお城に呼び出されて、なにやらご褒美をもらって帰ってきた様子です。さっそく不正直な意地悪じいさんもマネをしようと、隣のうちへ出かけました。

  • また、宝物をもらったようだな!? こんどはどうやって宝物を手に入れたんだ?
  • はぁ〜;

 正直爺さんはため息をついて元気がありません。

  • どうしたんだ、ワシがまた来たもんで、うんざりしてるのか? まぁうんざりしてもだな、ワシらのおじいさんの代のそのまたおじいさんの代よりも前から、ワシの家はお前さんの家の隣だからな。あきらめることだ。それにな、ワシには独創性というものがないんかのぅ、たとえ失敗すると決まっていてもお前さんのマネをせずにはおれんのじゃ。一種の強迫神経症かのう? さあ、早く話せ、こんどはどうやって宝を? また、ため息か。なんでそんな辛そうな顔をするんじゃ。そんなにワシがわずらわしいのか?

 意地悪じいさんは、こんどこそうまくマネをしてやろうと興奮気味に饒舌です。

  • そうじゃない、おまいさんのせいじゃないんだ。はぁ〜……
  • いったいどうしたんだ? いつも世話になっているんだから、何かくれるなら助けてやってもいいぞ?
  • はぁ〜……実はお城でな……
  • お城で?
  • ふぅうぅぅぅ……お殿様にな……
  • あの殿様にか?
  • わたしはな……
  • いったいなんなんだ!
  • ……
  • なんだ? まるで「正直爺さん、ウs……」まさかお前、この宝物……
  • ……(うなだれて、かすれたような声で)……ウソついた(苦しそうに、しくしく泣き出す)
  • あっはー!\(^o^)/ 「正直爺さんウソついたぁ、正直爺さんウソついたっ!」 わーしもお城へ行ってこう!