橋本健二「アンダークラスと日本の未来」ちくま新書、2018年、を読んだ。出版されたものの中ではたぶん新しい方であろうと思う。他にも書籍を所有しているので、順番は逆になった。
全体としては思っていたことが書いてあったが、次の部分は興味深かった。
「伝統的な左派、あるいはリベラル派は、所得再分配、環境保護、平和主義と行った主張を当たり前のように併置し、これらがひとまとまりの論理整合的な主張であるかのようにみなしてきた」。
しかし、そのような理解は今やどの階層にも受け入れられているわけではなく、新中間階級(被用者だが、比較的高年収・管理職・専門職である場合が多い)にそのような理解が見られる程度である。
「環境保護や平和主義の主張は、アンダークラスには届きにくい」。所得再分配と環境保護や平和主義を、ひとまとまりの一貫した政治的ポリシーだと考えているのは、厳密には新中間階級だけである」。
アンダークラスを放置しておくことは、アンダークラスに属する人びとのためにも社会のためにもよろしく無い、との立場から
政治転換が必要である、とする。
しかし、多くの人びとにとって、所得再分配(アンダークラスが望むこと)と環境保護や平和主義、原発問題は「関係ない」か「わからない」か「余計な」イデオロギーにすぎない。「左翼」や「リベラル」の所得再分配を取ると、余計なイデオロギーまでセットで付いてくるのが我慢ならない人も少なくない。
「それでは、どうすればいいのか。…格差の縮小と貧困の解消だけを旗印とし、アンダークラスを中心とする「下」の人びとを支持基盤にすることを明確に宣言する、新しい政治勢力があればいい」。
橋本氏のアンダークラス救済の処方箋はアンダークラス向けのポピュリズム政党の創出・出現のようにも思われる。
国民民主党が「手取りを増やす」、れいわ新選組が「消費税廃止、現金給付」というキャッチフレーズで伸長したことは、その有効性を示したもののようにも思える。だが参政党などの伸長を見ると、必ずしも所得再分配のみのワンイシューではなく、始めから「セット」にならないあれこれのスローガンの最適な組み合わせを自在に打ち出すことが、選挙という短距離競走で勝つためのコツであるように思える。もちろんそんなやり方が「アンダークラス」を救うわけではないが。
所得再分配を構造的に実現するためには、他の政策も関係してくるので、ポピュリズム政党待望論(橋本氏が本当にそれを主張しているかどうかは知らないけれど)では、アンダークラスの未来は無いように思う。