ザメンホフの第一回世界エスペラント大会での演説より

Ipernity のイタリアの人からの要請で。
第一回世界エスペラント大会のザメンホフの演説の一部の日本語訳(既訳)からの抜粋的要約。

 ……いろいろな国籍の人々が集まり互いに理解し合うことはよくあります。そのような集会で互いに理解し合えるのは、ごく少数の人たちに過ぎません。外国語の勉強に暇と金を使う余裕のある人たちです。
 しかし、私たちの(エスペラントの)会合では、誰でも相手の言うことがわかり、理解しようと思えば誰でも理解でき、貧乏や時間の不足のために私たちの話をきいてもわからないということはありません。

 いっぽう、私たちとは別種の集会では、ある民族に属する人が他の民族に属する人の前にへりくだり、自分のコトバをはずかしめて相手の民族のコトバを話、相手の前で口ごもったり、赤面したり不安になったりします。相手は、自分のほうが偉いのだと自慢したくもなるのです。(英語の前に立つ日本人を想起せよ、または旧宗主国の前に立つ旧植民地の現地の人たちを想起せよ。)

 ところが、私たちの集会では、民族の強弱や特権の有無による差別はありません。誰一人としてへりくだったり、当惑する必要はないのです。私たちは、みんな中立という土台の上に立っています。私たちは、みんなまったく平等な権利を持っています。そして、いまここに、人間の歴史ではじめて、さまざまな民族に属する私たちが、外国人や競争相手としてではなく、同胞として並び立っているのです。私たちは、国籍が異なる人たちが見せかけのためにしている握手ではなく、一人の人間同士として手を握り合っているのです。

L.L.ザメンホフ、水野義明 訳『国際共通語の思想』(新泉社、1997年)p177-p179