劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に関する条約(1975)について

  • 英文は

" target="_blank">C143 - Migrant Workers (Supplementary Provisions) Convention, 1975 (No. 143)


劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に関する条約(1975)について

以下は、歴史的位置づけや他の条約との関係などを解説する。
表題の条約は「1975年の移民労働者(補足規定)条約(第143号)」と言われている。

移民労働者関係ではILOは、1949年の移民労働者条約(改正)(第97号)同勧告(第86号)の後、1955年移住労働者保護(低開発国)勧告(第100号)1962年均等待遇(社会保障)条約(第118号)を採択した。
しかしその後、不正かつ秘密裡の労働力取引が多くの国で多発したので、こうした悪弊を除去するために、当条約は第97号条約(移民労働者条約)及び1958年差別待遇(雇用及び職業)(第111号)条約を補足する条約として採択された。
第1部で劣悪な条件の下にある移住、第2部で労働者及び家族の機会及び待遇の均等を規定する。
本条約の批准国は、違法に雇用された移民労働者の存否及び領域からの出発・通過・到着の監視・防止・除去義務を担う。
合法居住の移民が失業した場合に、その失業は居住許可や労働許可の撤回を意味しないこと、つまり、当該移民は雇用保障・代わりの雇用の提供や再訓練につき内国民と均等待遇を受けることが定められるが、国民的利益のため必要な場合は、限られた種類の雇用・職務に就く機会の制限は許される。
条約を補足する移民労働者勧告(第151号)が同時に採択されている。

https://www.ilo.org/ja/resource/1975%E5%B9%B4%E3%81%AE%E7%A7%BB%E6%B0%91%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%EF%BC%88%E8%A3%9C%E8%B6%B3%E8%A6%8F%E5%AE%9A%EF%BC%89%E6%9D%A1%E7%B4%84%EF%BC%88%E7%AC%AC143%E5%8F%B7%EF%BC%89


移民労働に関する主な国際労働基準及び国際基準

田中竜介氏(ILO駐日事務所 プログラムオフィサー/渉外・労働基準専門官)「移民労働者に関するILO条約と国際潮流」(PDF)(2021-4-27)11ページより

移民労働に関する主な国際労働基準及び国際基準
● 1949移民労働者条約(改正)(C97)、同勧告(R86)
- 移民労働者に対する保護、内国民労働者に劣らない待遇、公共職業紹介事業の無償など
1975移民労働者(補足規定)条約(C143)、同勧告(R151)
- 不正かつ秘密裡の労働力取引の監視・防止、移民労働者と家族の保護、帰国費用の負担禁止など
● 1990国連「全ての移住労働者及びその家族の権利保護に関する条約
- 移住労働者とその家族の基本的人権を規定。身元証明書類、労働許可証の没収禁止など
● 1997民間職業仲介事業所条約(C181)、同勧告(R188)
- 民間職業仲介事業所の規制・監督、労働者からの手数料他の徴収の禁止など
● 2011家事労働者条約(C189)
- 契約内容の出国前通知、帰還の権利、職業仲介された移民家事労働者の保護(仲介事業者の規制、苦情処理システム、不当な扱い防止のための国家間協定、仲介手数料の報酬からの差し引き禁止)など
● 2014強制労働条約(1930)の議定書(P29)、同補足的措置勧告(R203)
- 強制労働防止のための措置として移民労働者の保護、仲介事業者の規制及び手数料請求排除に関する政府の取組促進、被害者の処罰・訴追からの保護、リハビリテーション等のサポート、DDに関する支援

本条約(1975年の移民労働者(補足規定)条約(第143号)即ちタイトルの条約)の意義

(以下は、あまり確認していないChatGPTの受け売り)
第143号条約の歴史的意義は「移民労働問題を、単なる雇用問題ではなく、国家による管理と人権保障を両立させるべき課題として体系化した最初の重要な国際条約」という点にある。
そして、その思想が1990年国連条約へ受け継がれ、さらに、

  • 家族再統合
  • 不法滞在者であっても一定の基本的人権は保障される
  • 人身取引防止
  • 差別禁止

などへ発展していく。「外国人労働者を必要なときだけ働かせ、不要になれば帰す」という発想から一歩進み、「社会の一員として生活する人」として扱う方向への転換を示している。

歴史の流れとしてまとめるなら、以下のような発展の流れの中にある。

  1. 第97号条約(1949年)で合法移民労働者の基本的保護を定め、
  2. 第143号条約(1975年)で不正移民の取締りと適法な移民労働者の権利保障を統合し、
  3. 1990年国連条約(「全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」)でそれを労働法の枠を超えた包括的な人権保障へ

 その意味で、第143号条約は「前段階」ではあるが、単なる通過点ではない。移民労働を「管理」と「保護」の両面から捉えるという、現在の国際的な移民法・移民政策の基本的な枠組みを明確にした転換点として評価される条約だと言える。