英語なりドイツ語なり何なり、母語以外の言語を読めたほうが良いのは、そのことで知識を得たり・討論したりすることができるし、そのことによって認識なり行動なりがより普遍的な知見に裏打ちされる可能性があるからである。
ところが、日本における英語は、その人がどんな人であれ・とりわけ青年においては労働力商品としての価値を高める「付加価値」の指標としての意味が大きい。そのような学校体系になっている。
だから、多くの失業者や就業できないでいる若者たちが思っているように、その英語ができない分だけ自分の価値が低いような強烈な自己意識が形成されるし、実際にそのような社会的な関門は少なくない。だからこそ、少なくない若者たちが英会話学校などに通うのであろう。
こうして、人間の価値の小さくない部分を「英語」の能力が決めてしまう、日本語検定ではなく英語検定で就職口が広まったり狭まったりする。こうなると日本語の価値も低いような気になってくるし、実際日本語の価値は低いのかもしれない。
当然、これに対する反発・反感が起こる。勢い日本語賛美と日本賛美とが英語に対する劣等感と反感とを持って、一緒になって勃興してくる。これは自然なことではある。
そこで「国家の品格」は「美しい日本」の真髄である「美しい日本語」を「声に出して読む」ことによって維持され、町を歩けば「あいさつ」し「敬語」を使い、遠足すれば「自然に対して畏敬の念」を想起し・内に省みては「感謝」の心で頭をズクズクに水浸しに満たす。クイズ大会では「難読漢字」を読み当て・書き当てる。
そんな(後半部分はちと違うかも、だが)英語に反発しながら日本語にすり寄る気持ちが、知らず知らずにナショナリズムな意識を伴っていく環境に、われわれはおかれているのであるが、こうしたナショナリズムの滑り込みを丁寧に解きほぐしてくれる、そういう本だと思うので改めて紹介しておく。
- 作者: イヨンスク
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/12/18
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- 作者: 川口良,角田史幸
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2005/04/01
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「国語」という呪縛―国語から日本語へ、そして○○語へ (歴史文化ライブラリー)
- 作者: 川口良,角田史幸
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さて、日本における「国語」イデオロギーを考えるとき、方言と在日外国人(とりわけ韓国・朝鮮人)を抜きにすることはできないのだから、これらについてはまた読書してオモシロイのがあったら紹介したい。
なお、上の書籍にも引用・紹介されているカンナニ―湯浅克衛植民地小説集は図書館ででも探して読むと良いと思う。