La tradukita vorto "malegaleco" / 「格差」の訳語

単純な戦争や暴力の問題は(「単純な」と「簡単に」言い切れないはずだが)、これに抗議したり反対したりということは、論理的には「単純」なことであるから、その意味で「難しい」意見ではない。人はいつでもどこでも暴力を非難できると思うし、人の命を奪う戦争を忌む声を出すことができるだろう。「できる」というのは許容されるだろうという程度の意味である。
ところが、一歩それらの「原因」に足を踏み入れると「やっかい」である。そこには「利害」が絡んでくるからである。特に「少数民族」問題が関係していると、うかつなことを言うべきではないように思う。

それにしても、地球規模で拡がった「新自由主義」による、金融「至上」主義、投資効率主義、株主配当至上主義、そしてそれを支える「雇用の不安定化」は、それぞれの国の間の、またそれぞれの国の中での「格差」というものを大きく広げてしまった。新自由主義だけがその原因とは言わないが、少しでも社会問題について述べようとすると、「格差」に触れないわけには行かないことが多い。
また、戦争並みの自殺による死者数が続いている日本では、自分が死んでしまうのではなく「誰でもいいから殺したい、それで死刑になっても良いし、自分を死刑にして欲しい」というような動機からの凄惨な事件が多発している(か、あるいは多く報道されている)。犯人たちについて報道を見聞きすると、彼らも経済的に恵まれていたわけではなく、逆に格差社会の中で不安定な身分にあったり、失業や倒産、「派遣切り」による生活の破綻、といったことが背景としてあげられている。


さて、何か新しいことを書くときは、まずは「日本語エスペラント辞典」で調べる。これに載っていないか、違和感が強い場合は、いつもWikipediaの日本語版でその事柄を探して、同じ事柄エスペラントか英語の記事を見て、訳語や綴りを採っている。或いは、下のネット翻訳を使用している。
「格差」も概ね同じ手順で調べて書いてきた。即ち「日エス辞典」でもネット辞書でも"diferenco"である。

  1. Unua vortoj japanlingvoj
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URL

  1. 格差。経済格差。社会格差。身分格差。差異と格差。
  2. A difference. An economic difference. A social difference. A social position difference. A difference and a difference.
  3. 違い。経済違い。社会的違い。社会的地位差。違いと違い。
http://honyaku.yahoo.co.jp/transtext
  1. 格差。経済格差。社会格差。身分格差。差異と格差。
  2. Gap. Economic disparities. Social divide. Status disparities. Differences and disparities.
  3. ギャップ。経済格差。社会格差。ステータス格差。違いや格差。
http://www.google.co.jp/language_tools?hl=ja
  1. 格差。経済格差。社会格差。身分格差。差異と格差。
  2. A difference. An economic difference. A social difference. A social position difference. A difference and a difference.
  3. 違い。経済違い。社会的違い。社会的地位差。違いと違い。
http://translation.infoseek.co.jp/

Google に現れた「gap」は「lernu!」の辞書では「裂け目」「ひび割れ」などを意味する「brecxo」が出てくる。「disaparties」の方は部分一致で検索でもlernu!辞書には登録されていないようだ。
さて、diferenco は「差異」であるが、「格差」というのは「平面的」差異と違って、量・質の高さなど、「大小」「高低」の差異を言う。日本語で単に「差異」「違い」とだけ言うときは、同じ質に還元してから量的差異を表現するというよりは、量的差異を捨象した「非同一性」を強調するような言葉だと思う。
今まで、格差については、上の辞書や翻訳機に従って、diferenco という言葉を使ってきたが、強い違和感を引きずってきた。「格差」に近い訳語はそうすると、diferenco ではなくて「不平等 malegaleco」の方がふさわしいと思われる。
われわれの社会では、ここ何十年も、「平等」という理念は社会から「競争」を排除し、そしてそれゆえ「活力」を奪うものとして、忌み嫌われてきた。「公正・公平であること」は、「平等」を結果するのではなくむしろ「不平等」を結果するのが「正しい」「望ましい」とされてきたのである。その例証としていつも挙げられたのが、「平等」を標榜し「競争」を排除したがために「意欲」も絞め殺してしまった「社会主義」の「自壊」ということであった。
しかし、今、この「公正」「公平」に基づく「不平等」が若者や、労働者、高齢者から「意欲」だけではなく「希望」や「人間性」まで奪い、さまざまな悲劇を生み出しているのではなかろうか。さらに地球のいろんなところで、民族間の「不平等」がさまざまな不満や紛争を呼び起こしているのは明らかではないか。また、例の「社会主義」も「平等社会」というよりは、びっくりするような「不平等社会」であったことが明らかになってきている(それが主要なことかどうか知らないけれど)。



確かに「競争」は不平等を結果しはするが、活力をも産み伴うのは僕も否定はしない。しかし、もっと恐れず「平等」ということが唱えられても良い局面に来ているのではないか。それは、「人間の根源での平等」とかいう抽象的なことではなくて、「誰もが安心して高等学校、望めば大学にまで行って、学んで自分を見つけたり大切に育てたりすることができる」ような「平等」、「病気になったら、誰でも我慢せずに近くの病院に行って、安心して早めに手当てしてもらえる」ような「平等」、「二十台で安心して結婚して子どもをもうけけられる」ような「平等」、そんな高いレベルでの平等である。これらの平等が社会から活力を奪ってしまうとは思えないのだがどうだろうか。


まあ、そういうわけで、これまで「格差」を diferenco で訳してきたけど、遡及して malegaleco に変更することにした。